うつ病におけるオーダーメイド医療を促進するエビデンスを得るため、同意の得られたうつ病患者から臨床データと血液を収集し、今年度は以下の心理学的及び遺伝学的研究を行った。 1、大うつ病性障害において、いわゆる内因性うつ病と考えられるメランコリーの特徴を伴う群、Borderline Personality Disorde(BPD)併存群、それ以外の群の3群間において、Temperament and Character Inventoryの各下位因子平均点を比較した。自己志向の得点は、BPD併存群、それ以外の群、メランコリーの特徴を伴う群の順に低く、有意差が認められた(P=0.007)。今後、症例数を増やし、メランコリーの特徴を伴う患者やBPDを併存する患者を判別するためのcut-off pointならびに感度、特異度を探索する予定である。 2、メランコリーの特徴を伴う患者やBPDを併存する患者は、遺伝学的背景がことなることも推察されることから、5HTTLPRや5HT2A受容体遺伝子102T/C変異との関連に関して検討した。メランコリーの特徴を伴う群は5HT2A受容体遺伝子102T/C変異のCC型が多く、また、BPD併存群には5HTTLPRのSS型が多く、それぞれ有意傾向が見出された。 3、抑うつ状態に影響をおよぼしている対人関係のあり方の不適合度を測定する29問からなる自己記入式質問票を開発した。現在、予備的に少数の患者に試行してもらい、妥当性を検討し質問内容の改訂を繰り返している。今後、信頼性と妥当性を検討していく予定である。 4、薬理遺伝学的検討のためには、抗うつ薬の中で現在もっとも主流であるparoxetineの効果と副作用に関連した遺伝子多型を見出すために、順次、血中濃度測定および遺伝子解析を行っている。相当数サンプルが集まった時点で、薬効と各種遺伝子多型の関連を統計学的に検討する。
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