研究概要 |
1、心理学的検討では、内因性うつ病と考えられる(1)メランコリーの特徴を伴う群、(2)BorderlinePersonalityDisorde(BPD)併存群,(3)それら以外の群の3群間において、TCIの各下位因子平均点を比較した。自己志向の得点は、(2)群く(3)群く(1)群の順に優位に低かった(P=0.001)。BPD合併を判別するために同得点のcut-offpointを18点以下とすると感度0.739、特異度0.647が得られた(曲面下面積0。782、P=0.001)。 2、遺伝学的検討では、(1)群は5HT2A受容体遺伝子102T/C多型のC/C型が有意に多くみられた(P=0.017)。(2)群にはCOMT遺伝子Va1158Met多型のVa1/Va1型が有意に多かった(P=0.045)。 3、薬理遺伝学的検討では、paroxetineの効果・副作用と遺伝子多型との関連をprospectiveに検討した。SIGH-Dの経時的評価と各種遺伝子多型との交互作用を検討したところ、β3adrenergicreceptor遺伝子10T/C多型において有意であった(P=0.015)。レスポンダー率、寛解率と有意に関連する遺伝子多型は見出せなった。また、paroxetine血中濃度のレスポンダー、寛解への影響は見出せなかったが、頭痛や消化器症状などの副作用出現群では、非出現群よりもむしろ血中濃度が有意に低く(P=0.021)、Histamine2受容体遺伝子一1018G/A多型と有意な関連がみられた(P=0.049)。 4、以上の成果は、心理検査と遺伝子多型を用いて、うつ病患者が内因性うつ病であるのか非内因性うつ病あるのか、人格障害が併存しているかどうかの鑑別を行い、さらに個人にあった最適な抗うつ薬の選択をするうつ病におけるオーダーメイド医療を促進する基礎的エビデンスになると考えられる。
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