本研究において、新規抗うつ薬SSRIの薬物動態とその関連遺伝子多型および薬物作用部位における遺伝子多型がSSRIの治療反応性・副作用に与える影響を検討し、これまでに150名のサンプルを解析して、以下のような研究結果を報告した。 副作用予測因子については、SSRIであるfluvoxamineの作用部位であるセロトニン2A受容体遺伝子多型およびfluvoxamineの薬物動態に影響を与えると考えられるcytochromeP450(CYP)2D6遺伝子多型がそれぞれfluvoxamineの消化器系副作用の出現に影響を与えることを明らかにした。さらにセロトニン2A受容体遺伝子多型とCYP2D6遺伝子多型の組み合わせの方が、消化器系副作用を予測するのにより有用なマーカーであることを報告した(Suzuki et al.2006)。また、同じくSSRIであるparoxetineについての研究も行い、セロトニン3B.受容体遺伝子多型がparoxetineの消化器系副作用に重大な影響を与えることを報告した(Sugai et al.2006)。 薬物動態学的因子については、腸管やblood-brain barrierなどに存在する薬物トランスポーターであるadenosine triphosphate-binding cassette subfamily Bmember 1(ABCB1)とfluvoxamine血中濃度について検討したが、ABCB1遺伝子多型は高用量でfluvoxamine血中濃度に対して強い影響があることを報告した(Fukui et al.2007)。 新規抗うつ薬SSRIの効果及び副作用予測を可能にするために、薬物動態学的・薬力学的ゲノム情報を包括的に解析し、以上のような臨床上きわめて有益な結果を報告した。
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