研究課題
PTSD患者5名を対象として、薬物療法とEMDRによる症状改善の前後で、PET賦活検査とロールシャッハ検査を行った。対象の患者5名は、阪大病院精神科の外来に通院中のPTSD患者であり、薬物療法後もPTSD症状が持続し、CAPS-DXにて65点以上という基準をみたした。治療法として、薬物療法を続けながらEMDRを施行した。EMDRに熟練した精神科医が施行した。症状の指標であるSUDsやVoCが十分改善するまで、最大10セッションまで施行した。いずれの症例も4ヶ月間ほどで症状の改善がみられた。その前後にロールシャッハ・テストによる心理学的状態の評価、およびPET賦活検査を行った。ロールシャッハ検査では、症状改善前には、いずれの症例にも共通してモービット反応が目立って認められた。これは他の精神疾患ではあまりみられない反応であり、PTSDに特異的な反応である可能性が示唆された。さらに、このモービット反応は、EMDR後にはいずれの症例においても軽減あるいは消失し、PTSDの症状の強さを反映することが示された。PET賦活検査では、外傷体験を想起させる内容の文章を聴覚的に提示した。対照課題として、情動的に中立な文章を提示した。情動賦活課題と対照課題をpseudo-randomな順に行い、その際の脳活動をPETにより記録した。その結果、症状改善後にくらべて症状改善前に情動賦活課題でより強い賦活がみられたのは右扁桃体、逆に活動低下がみられたのは前部帯状回であった。これらの領域はこれまでにもPTSDの病態との関係が示唆されていたが、EMDRによる症状改善の前後で同一被験者において変化がみられたことは重要な知見と考えられた。次年度も症例を増やして同様の検討を行い、PETと心理検査との相関などにも注目して考察を進めていく。
すべて 2006 2005
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PTSD : Brain mechanisms and clinical implications. -
ページ: 247-254
Psychiatry and Clinical Neurosciences 59
ページ: 155-162