研究概要 |
脳血管性うつ病(vascular depression : VD)の認知情報処理に関連する脳機能障害と部位を明らかにし、老年期うつ病の長期的な機能障害を改善させることを目的として以下のような検討をおこなった。 1)脳卒中患者の障害部位と抑うつの臨床症状の特徴との関連、2)機能的MRIを用いたVDで認められる機能障害についての検討、3)脳卒中後うつ病とリハビリテーションとの関連。その結果、1)両側の基底核が障害されていた患者ではApathy Scale(意欲低下の程度を示す)の得点が有意に高く、左側前頭領域が障害されていた患者ではZung Self-Rating Depression Scale(抑うつ期分の程度を示す)が有意に高値であった、2)言語流暢性課題を用いた。血管障害の有無で比較すると、有意な差は認めなかったが、これまでのうつ病相の回数で比較すると複数回のうつ病相を経験した患者では前帯状回の活性が低下していた,3)脳卒中患者では抑うつ、意欲低下の程度と機能障害の程度と相関していたことから、抑うつ傾向の改善がリハビリテーションの機能回復にとって大切であることが示された。 以上の結果より脳卒中患者では障害部位の違いにより認められやすいうつ病の症状に違いがあり、左側前頭領域が障害されていた患者で典型的なうつ病症状が、両側の基底核が障害されていた患者で意欲の障害といったより器質的な症状が認められやすいこと、老年期うつ病患者の認知機能の低下や脆弱性には血管障害の存在とともにうつ病の再発の多さが関連していること、脳卒中後のリハビリテーションの進行に抑うつが影響を及ぼすことが明らかとなった。
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