《一次調査》1990年の雲仙普賢岳噴火の開始から15年が経過した2005年の8月に当時の被災地域に現在居住されている島原市民2500名を対象にアンケート用紙を送付し、現在の心身の健康状態と被災体験に基づく外傷後ストレス障害の症状のスクリーニングを行なった。本調査の実施に先立ち、その手順と倫理的配慮について、長崎大学医学部倫理委員会の承認を得た。また実施に際し長崎県福祉保健部障害福祉課、島原市役所、長崎県県南保健所、島原市保健センターの協力を得た。アンケートには、450名の方が返送され、調査の同意書と回答を得た。アンケートの内容は総合健康質問紙(GHQ)12項目版と災害時の外傷後ストレス障害のスクリーニングによく用いられる出来事インパクトスケール改訂版(IES-R)を中心とするものであった。この450名の中で、10%にあたる45名の方がこのIES-R総点25点以上の高得点群にあたり、災害後15年を経過しても、外傷後ストレス障害の状態もしくはそれに近い状態の方が少なからず存在する現状が示唆された。《二次調査》2006年の2月、上記の結果を踏えさらに生物学的指標、脳機能評価を加えて、PTSD症状の有る群と無い群の特徴を調べる為、450名の中から、20%にあたる90名の方に二次調査の依頼をし、近赤外線光トポグラフィー装置による脳内のヘモグロビン濃度変化測定と血中BDNF(脳由来神経栄養因子)測定を行った。15名の方に御協力を頂きデータの収集を行った。2006年4月より年齢、性別をマッチさせた対照群のアンケートと採血を行い比較検討している。これらの結果と合わせて、被災状況やその後のサポート体制と現在の症状との関連について現在解析中である。結果の一部は、2006年11月の第59回九州精神神経学会と07年3月の第26回日本社会精神医学会にて発表している。
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