対象患者は、DSM-IVの診断基準に基づき選出した統合失調症患者である。対象には、本研究の内容を十分に理解してもらった後、同意の得られた選出者にMRIを実施している。また、症状重症度は陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて評価した。また、研究趣旨を説明し同意が得られた健常者についてもMRIを行なった。全対象者について、1.5 TeslaのGE Signa Horizon LXを用いて1.5mm間隔のT1強調画像を3.0mm間隔のT2強調画像を撮像し、脳形態学的解析を行なった。また、全対象者に前交連および後交連を結んだ線(AC-PC line)に平行な水平断面についてspin-echo type single-shot echoplanar sequence(TR 2000ms、FOV 24×24cm、マトリックス128×128、加算回数4回)の条件下で、1000s/mm^2の拡散検出傾斜磁場を印加して計9スライスの拡散強調画像を実施した。テンソル解析には上小脳脚に2x2mmの関心領域を設定した。結果、健常者に比べて統合失調症患者群では左右上小脳脚の関心領域においてFractional Anisotoropy(FA)が有意に低下していた。統合失調症患者群では左側上小脳脚FAは認知機能評価スコアと正の相関を示した。これらの結果から、統合失調症患者では、大脳と小脳の連絡路である上小脳脚の微細な神経線維連絡異常がある可能性が示され、この器質的な異常は統合失調症の認知機能障害と関連があることが考えられた。本研究の結果については、Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 30:1408-1412(2006)に研究論文として掲載された。脳形態学的研究については、昨年度MRI解析ソフトBRAINSを用いた脳内体積測定の信頼性試験の一致率が高かったため、さらに対象者の解析を開始している。さらに被験者数を増やすため、スウェーデンカロリンスカ研究所と共同研究を組み定期的な話し合いの機会を設け、具体的な計画を立てている。
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