腫瘍血管は、抗癌剤開発の重要なターゲットであり、近年様々な腫瘍血管標的型抗癌剤が開発されている。本研究では、優れた腫瘍血流遮断効果を示すコンブレタスタチン誘導体の新規抗癌剤AVE8062の薬物動態および治療効果について、Positron Emission Tomography (PET)用の放射性薬剤を用いて評価することを目的としている。本年度は、独自に開発した[^<11>C]AVE8062を用いた担癌ラットにおける薬物動態の検討、並びに、[^<11>C]AVE8062の新規簡易合成法の確立を目的とする新規標識前駆体合成を行った。薬物動態については、肝癌細胞AH272またはLY80を皮下移植し腫瘍塊を形成させたラットに[^<11>C]AVE8062を尾静脈内投与して、5分、15分、60分後に各種臓器および腫瘍組織を摘出し、各組織1グラムあたりの放射能集積率(%ID/g、投与量100%)を調べた。AH272の場合は、腫瘍組織について投与後5分で最大0.41%ID/gの集積がみられ、その後時間の経過とともに減少する動態を示した。一方、LY80の場合は、投与後15分で最大0.203%ID/gの集積がみられ、その後減少することが明らかになった。また、その他の臓器への集積性から、AVE8062は肝臓、小腸で主に代謝・排泄される事が確認された。非代謝排泄系臓器では、肺に比較的高い集積性を示すという興味深い知見が得られた。今後、放射性代謝物の分析などを行い、より詳細なAVE8062の薬物動態を調べる予定である。[^<11>C]AVE8062の新規簡易合成法については、簡易合成に適した新規標識前駆体としてAVE8062のO-モノ脱メチル体のN-Fmoc化した化合物を合成した。この新規前駆体による標識合成の予備実験を行ったところ、室温で短時間に合成できる可能性が示唆された。今後、より詳細な合成条件の検討を行う予定である。
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