研究概要 |
コンブレタスタチン誘導体のAVE8062は、腫瘍細胞への酸素・栄養素の供給源となっている腫瘍血流の遮断(癌の兵糧攻め)により抗腫瘍効果を示す薬剤であり、現在欧米でPhase Iの治験が進行している。本研究では、AVE8062の薬物動態および治療効果のPETによる評価手法の開発を目的としている。本年度は、AVE8062の血流遮断効果によって誘発が懸念される腫瘍低酸素状態の評価を目的として、AVE8062投与時における[^<18>F]FMISOの腫瘍集積性の検討を行った。方法としては、腫瘍細胞LY80を背部皮下に移植して作製した担癌ラットに対して、AVE8062(2,5,10mg/kg)および[^<18>F]FMISOを一定時間間隔で尾静脈内投与し、[^<18>F]FMISO投与2時間後に腫瘍塊及び主要臓器組織を摘出して放射能集積率(SUV)を算出し、AVE8062未処置の場合(コントロール)と比較した。また、同様の処置を施した腫瘍塊のARGを行い[^<18>F]FMISOの腫瘍組織内分布を検証した。結果は、AVE8062処置群では、主要臓器組織の[^<18>F]FMISO集積率は対コントロール変化率で13%未満であったが、腫瘍では49(2mg), 107(5mg,p<0.01), 85(10mg,p<0.05)%となり特異的低酸素化の誘発が確認された。そしてAVE8062処置(10mg)の腫瘍ARGでは、腫瘍中心部よりも周辺部でより高い放射能集積が確認された。これらの結果からAVE8062による癌治療では局所的に腫瘍低酸素細胞が残存する可能性が示唆された。従って、AVE8062の治療効果・予後の評価を行う際にはFMISO-PETによる治療モニターの実施が必要になると考えられる。また、AVE8062の治療効果を高めるためには、腫瘍低酸素を標的とした治療法との併用療法が有効である可能性が示唆された。
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