患者死亡後に行われる病理解剖は、生前不明であった病態の解明に不可欠な要素である。しかし、患者および遺族意識の変化に伴って、病理解剖への承諾の割合は減少の一途をたどっている。また近年医療に対する患者意識の向上に伴い、医療訴訟の件数が増加している。近年ではこれらの事態をふまえ、病理学、法医学、放射線科学が協同で、死亡時画像病理診断(オートプシーイメージング)を行い、剖検をめぐる諸問題の解決方法を検討しようという動きがある。この様な状況下において、オートプシーイメージング学会が昨年設立された。本研究は、オートプシーイメージング情報の共有とデータベース化をめざし、各医療機関における撮像環境の整備とネットワーク環境構築を行い、データベース共有システムの整備を行う。このシステムを利用して、死因が不明な場合にも病理解剖を行わなくても、適切な診断が出来るようにすると共に、現在見逃させていると考えられる死因を明確にすることを目的とする。 本年度はまず、当病院単施設での撮像環境の整備と画像データの保存およびデータベース化のための環境整備を行った。倫理的問題に配慮して、オートプシーイメージング実施のための撮影室環境-すなわち通常患者撮像との隔離ルートの確立を整備した。撮像機器は当院にて完備されているGE社製Multidetectore-raw CT装置Light SpeedおよびGE社製MRI装置Signa Holizonを使用して、8例についてデータを集積した。専用のコンピュータシステムを増設して、3次元データを取得しデータベース保管を行った。一方、多施設とデータ共有のためのネットワークシステムの構築のためのプログラムを農工大と共同で開発中である。
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