研究概要 |
患者死亡後に行われる病理解剖は、生前不明であった病態の解明に不可欠な要素である。しかし、患者および遺族意識の変化に伴って、病理解剖への承諾の割合は減少の一途をたどっている。また近年医療に対する患者意識の向上に伴い、医療訴訟の件数が増加している。近年ではこれらの事態をふまえ、病理学、法医学、放射線科学が協同で、死亡時画像病理診断(オートプシーイメージング)を行い、剖検をめぐる諸問題の解決方法を検討しようという動きがある。本研究は、オートプシーイメージング情報の共有とデータベース化をめざし、各医療機関における撮像環境の整備とネットワーク環境構築を行い、データベース共有システムの整備を行う。このシステムを利用して、死因が不明な場合にも病理解剖を行わなくても、適切な診断が出来るようにすると共に、現在見逃させていると考えられる死因を明確にすることを目的とする。 今年度は、専用のコンピュータシステムを増設して、院内で発生した剖検症例に対して、解剖前のCT画像を7症例撮像した。これらの症例について3次元データを取得しデータベース保管を行った。病理解剖前に画像診断を行うことにより、病理標本の適切な摘出および保管が可能となり、また7症例中5症例で、解剖前に死因の特定が可能であった。一方、多施設とデータ共有のためのネットワークシステムの構築の基礎段階としてCD,DVD媒体によるデータの移動およびデータのCADシステムを使用した骨折の評価などを実施した(個人情報保護法の問題がありすべて患者IDなどは消去してある)。この研究においては、関係協力機関である、救急医療センターにCPAOAで搬送された症例のCT検査および、法医学教室の協力の下、不審死が疑われる遺体に対して行われたCT検査の症例をもとに、骨折データの抽出および解析を東京農工大と共同で研究を実施している。今年度で研究期間が終了となるが引き続きシステムの構築を目指し、研究を進める。
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