研究概要 |
鼻腔原発の悪性リンパ腫は、従来、進行性鼻壊疽、致死性正中肉芽腫などと呼はれ、壊死を伴い浸潤性の発育を特徴とし、治療抵抗性の疾患とされてきた。1990年代に入りその多くが悪性リンパ腫であることが判明し、血管破壊性に腫瘍が増殖するという特徴から、1994年のREAL分類ではAngio-centric T-cell lymphomaと命名された。その後の分子生物学的検索により、本疾患ではT細胞受容体の再構成が認められず、NK細胞の表面形質であるCD56が高率に陽性であることから、2001年のWHO分類ではExtranodal NK/T-cell lymphoma, nasal typeとされた。本疾患は頻度が低いため、現時点で標準治療は確立していない。本研究は鼻腔NK/T細胞性リンパ腫において治療前後および経過観察中の患者血清中のEBV DNA量と予後の関連を検討する。その結果、比較的予後良好な患者群と不良な治療抵抗性の一群とを早期に区別し、治療の個別化、再発の早期診断に役立てることが最終目的である。研究期間の3年間において、鼻腔NK/T細胞性リンパ腫における治療前後の血清中のEBV DNA量の変化を測定することを目的とした。前記目的を達成するため、本年度は以下の様な研究を行った。本年度は1例の患者しか来院しなかったため、末梢血5mlをEDTA入りのスピッツに採取後1600gで遠沈させ、血清をポリプロピレンのチューブへ移して使用するまで-20度で保存した。数例の症例が蓄積したところで、凍結保存しておいた血清からキットを用いてDNAを採取する予定である。来年度以降、EBVのBamHI-WおよびEBNA-1と2つの領域にプライマーを設定して血清中のEVB DNAを増幅を行う。Real-time quantitative PCRにはABI Prism 7700 Sequence Detector(PE Biosystems)を用いてデータの収集を行う。得られだPCRのデータをSequence Detection System(PE Biosystems)を用いて解析し、臨床診断に役立つか否か検討する予定である。
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