研究概要 |
エネルギー依存性の膜輸送が治療効果を早期に反映するかを検討するために,エネルギー依存性のアミノ酸トランスポータであるシステムAに注目し,システムAの基質である[^<14>C]alpha-(methylamino)isobutyric acid(^<14>C-MeAIB)を用いて,治療効果判定薬剤の標的としての有用性を検討した.ヒト耳下腺癌細胞であるHSG細胞を用いて,インビトロにおいて炭素線照射前後における細胞数の変化および^<14>C-MeAIBの取り込みの変化を検討した.その結果,腫瘍細胞への^<14>C-MeAIBの取り込みの減少は細胞数の減少が始まるより早期に観察された.また,アミノ酸輸送システムLの選択的阻害剤である2-amino-2-norbornane carboxylic acidあるいはアミノ酸輸送システムAの基質であるMeAIBを用いて,炭素線照射後の^<14>C-MeAIBの取り込みの減少に関与する膜輸送システムを検討したところ,主にアミノ酸輸送システムAの寄与により取り込みが減少していることが示された.次にエネルギーの源となる細胞内総ATPの量と^<14>C-MeAIBの取り込みの変化を検討した.^<14>C-MeAIBは炭素線3Gy照射3日以降に有意な減少が観察されたのに対して,細胞内総ATP量は測定した5日間ではいずれの日においても有意な差は観察されなかった.以上の結果は両薬剤の取り込みは細胞内の総ATP量の低下が現れる前の状態において減少することを示唆しており,治療効果の早期診断薬剤の標的として,エネルギー依存性の膜輸送が有用であると考えられる.
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