研究概要 |
腫瘍の悪性度に関与する糖転移酵素、GnT-Vの活性を定量化するインビボ画像診断用放射性薬剤の開発を目指し、当該年度は、設計した化合物の3糖構造部分と放射性ヨウ素を導入したヨードフェニル基とのリンカー部の炭素鎖数がn=2の化合物の合成と、インビトロでの基礎的評価を行った。 フェニル基のヨウ素導入部位をトリブチルスズで置換した前駆体とNa[^<125>I]を反応させることにより、目的とする化合物([^<125>I]IPGMG)を、無担体、95%以上の放射化学的純度にて得た。GnT-Vを遺伝子導入したWidr細胞の溶解液について、糖鎖ドナーのUDP-GlcNAcと[^<125>I]IPGMGを37℃で4時間反応させ、Double reciprocal plotにて求めたKm値は24mMであり、本化合物のGnT-Vとの親和性は、現在汎用されている蛍光標識基質のGn,Gn-bi-PA(Km:270mM)より10倍以上高いことが明らかとなった。また、種々の濃度のGnT-Vを含有する試料につき、[^<125>I]IPGMGを用いてGnT-V活性を測定したところ、蛍光法と比較してより高感度にGnT-V活性を測定できることが示された。 一方、[^<125>I]IPGMGのインビボ画像診断薬としての可能性については、Widr細胞を用いた取込み実験にて検討したところ、本化合物は細胞膜透過性が悪いことが明らかとなった。これは、リンカー部の炭素鎖が少なく、脂溶性の獲得が十分でなかったためと考えられる。そこで、現在炭素鎖n=13の化合物を合成中であり、これについても同様の手法にてGnT-Vの基質としての活性を評価した上で、腫瘍細胞と担癌動物を用いた実験から、インビボ画像診断薬剤としての展開を試みる予定である。
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