研究概要 |
糖転移酵素であるN-Acetylglucosaminyl transferase-V(GnT-V)の発現は腫瘍の悪性度と関連するため、その活性を測定することにより、腫瘍の質的診断が期待される。本研究では腫瘍集積機序にGnT-Vによる水溶性の増大(糖付加)を利用した、代謝トラップ型診断薬剤の開発を試みた。すなわちGnT-Vの基質認識性を考慮し、3糖構造:GlcNAcβ1→2Manα1→6-Glcのグルコース部分に、直鎖状炭素を介して放射性ヨウ素標識Iodophenyl基を導入した化合物を合成し、その有効性を基礎的に評価した。 まず、リンカーとなる直鎖状炭素鎖数が2の化合物について、対応するアルキルスズ前駆体からI-125標識化合物([^<125>I]IPGMG)を合成し、in vitroで評価した。その結果、[^<125>I]IPGMGはGnT-Vに基質として認識され、さらにHPLC分析により求めた反応速度をDouble reciprocal plot解析したところ、Km値は24μMであり、汎用されている蛍光標識試薬(Gn, Gn-bi-PA)と比較して約10倍以上のGnT-Vへの高親和性を有することが明らかとなった。また、本法の検出感度は蛍光法より約3倍高く、[^<125>I]IPGMGによるGnT-V活性のin vitro測定の可能性が示された。 一方、GnT-Vを遺伝子導入したWidr(大腸癌)細胞を用い、[^<125>I]IPGMGの取込み実験を行ったところ、本化合物は細胞膜透過性が低いことが明らかとなった。これは、リンカー部の炭素鎖数が細胞膜を透過する上での脂溶性の獲得に不十分であったためと考えられたことから、引き続き炭素鎖を伸長あるいは脂溶性を高める適当な置換基を導入した化合物を合成し、動態制御を達成することでI-123標識in vivo SPECT用放射性診断薬剤へと展開する。
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