肝腫瘍化学塞栓療法(TAE)における標的塞栓性及び薬剤溶出性を兼備えたdrug delivery system(DDS)として薬剤溶出性高吸水性ポリマー(DESAP)の開発を企図した。抗癌剤は肝細胞癌に比較的感受性が高いCDDPを選択し、家兎肝VX2腫瘍モデルを用いてin vitro検討を行った。DESAPの調整はSAP5mg/CDDP2.35mg/イオン性イオキサグル酸0.5ml/1羽とし、DESAPによるTAE施行群(DESAP群、n=6)、同量CDDP溶液注入後SAPによるTAE施行群(TAI+SAP群、n=6)を比較検討した。 薬剤注入後5、10、30、60分、24時間における血液中total CDDP平均濃度(μg/ml)は、 DESAP群:1.57、1.41、0.89、0.69、TAI+SAP群:2.79、2.39、1.73、1.34 同血液中free CDDP平均濃度(μg/ml)は、 DESAP群:1.04、0.88、0.47、0.27、TAI+SAP群:1.53、1.17、0.64、0.32であった。 腫瘍辺縁部及び周囲肝の平均白金濃度(μg/g)は、各々、 DESAP群:1.43、0.38、TAI+SAP群:0.49、0.34であった。 血液中total及びfree CDDP濃度ともDESAP群がTAI+SAP群よりも低い傾向を示し、また腫瘍辺縁部でDESAP群は高い白金濃度を示した。以上より、DESAPの組織内での薬剤徐放効果が示唆された。但し、病理学的な腫瘍壊死効果については両群の差は不明であった。
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