今年度は、基礎的検討としてファントム実験を行った。擬似脳組織ファントムとしてビーズとチューブをいれた直径4cmのシリンジをさらにプラスチック容器に設置し、隙間を寒天で充填したものを用意した。0.1mMのGd-DTPA溶液を非拍動性の水流ポンプにて水槽〜灌流管〜ファントム循環させた。撮像には、九州大学医学部付属病院に設置された静磁場強度1.5テスラのMRI撮像装置を用い、ASL法を撮像するシーケンスはすでに組み込まれているQ2TIPSというアプリケーションを使用した。シリンジ上流にラベル域、10mm下流に撮像域(EPI、5スライス、8mm厚、1.8mmギャップ、TR=2s、TE=26ms、TI1=50ms、TI1s=1.3s、TI2=1.4s)を設定、実測流量Fを0から27.2ml/sの間で変化させて得られた信号から算出した計算流量F'を比較した。この結果、計算流量F'と実測流量Fは15<F<20ml/sでよい直線的相関を示した(F'=1.024F-1.915、R^2=0.902)。また計算流量F'は実測流量Fを基準として92±4%であった。他文献のデータでは85〜97%であった。この誤差の原因にはMRI撮像装置の性能、Q2TIPSの精度、ASL理論から導かれる計算方法の正確さ、等が関係していると考えられたが、他文献からの参考データを考慮すると、これらの定量的血流量測定の結果は妥当的であると結論した。この結果に関して、平成18年2月18日、19日に開催された第162回日本医学放射線学会九州地方会にて、「Pulsed Arterial Spin Labeling(PASL)のファントム実験」として口演発表した。
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