使用する内皮細胞:本研究ではヒトの血管内皮細胞として、正常ヒト成人皮膚微小血管内皮細胞(HMVEC)で実験予定であったが、経費削減と使用経験のあることを理由に研究室に既存のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に変更した。 放射線照射によるiNOSの発現:HUVECにX線照射後、iNOSの発現を、RT-PCRとWestern blottingでそれぞれmRNAと蛋白の発現を検討した。iNOS mRNA発現は2Gy照射後4時間後より発現を認め、6時間後に最大発現を認めた。iNOS蛋白の発現は、X線未照射のHUVECでも僅かにiNOS蛋白の発現が認めたが、2Gy照射4時間後よりiNOS蛋白発現増加を認め、12時間後に最大となり、24時間後まで有意に発現増加を認めた。照射線量変化とiNOS蛋白の発現では、2Gy照射にて有意な増加を認め、10Gyで最大となり、更に照射線量増加にて発現量に影響は認めなかった。以上より、HUVECでもX線照射によりiNOSが誘導されることが証明された。 放射線照射によるNOの産生:X線照射後のHUVECのNO産生をNO感受性蛍光色素DAF-2にて検討した。L-アルギニンのみの投与にてX線照射後のHUVECからNOの産生増加を認め、これには上記X線照射により誘導されたiNOSの関与が示唆された。 その他の研究実績:子宮頸癌に対して、放射線照射と動注化学療法を併用することがある。将来的に放射線増感剤を動注療法に組み入れる可能性を模索するために、子宮頸癌への放射線照射の効果の画像評価(MDCT)を行った。早期子宮頸癌の術後骨盤照射のため、卵巣を照射野外に移動させる、卵巣移動術後の卵巣の同定法についても研究を行った。MDCTにて移動卵巣の卵巣静脈を同定することにより、移動卵巣の同定が可能となることを明らかにした。この内容については、次項の論文にて掲載予定である。
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