現在佐賀大学医学部付属病院で稼動中である、MRI装置(GEメディカル社、Signa Horizon 1.5テスラ)と、軟部組織用の同社の5inchの表面コイルを応用して、まず模擬乳腺を想定したファントムを用いて撮像に適したパラメーターを決定した。撮影シーケンスは、スピンエコー法のT1強調画像、高速スピンエコー法の脂肪抑制T2強調画像、また造影剤後のダイナミックスタディーに用いるグラデュエントエコー法の撮影を様々な条件で行い、至適撮影条件を検討した。従来の乳腺コイル使用時の関心領域は16cmで片側乳腺をカバーしているが、乳腺のある部位に限定すれば表面コイルを用いて8cm程の関心領域で撮像でき、条件設定により1〜2mm程のスライス厚、256×256matrixにて高い分解能、3〜5分ほどの臨床上問題のない撮影時間で撮影できることを確認した。また複数の放射線科医により、模擬病変の信号、内部の微細構造、辺縁の性状に関して、通常の乳腺コイルを使用した場合との画像の対比を行った。通常の乳腺コイルに比べて、ある限定した領域での空間分解能の向上が得られ、どのシーケンスにおいても、模擬病変部の画像向上が確認された。その後インフォームドコンセントを得た患者に対して、撮像を実際に行なった。複数の放射線科医により、病変の信号強度、内部の微細構造、辺縁の性状、造影剤投与後の造影パターン、進展範囲の評価を行った。症例数が少なく統計的な解析は行えないが、従来の乳腺コイルと比較して、病変の検出能、内部構造、辺縁の性状に関しては、表面コイルの方が良好であると思われた。病変の信号強度に関して差はないようであった。今後症例を重ねて、病変の進展範囲、良悪性鑑別等に関しても検討する。また病変の内部構造に関しては、手術にて切除された病変の病理所見と対比を行ない評価していきたい。
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