研究概要 |
近年、多くの固形癌に対する化学療法と放射線療法との併用、特に同時併用の有効性が確認されている。ゲムシタビン(GEM)は細胞内蓄積効果の高い新規DNA合成阻害剤であり、それ自体でアポトーシスによる細胞死を惹起すること、また、正常組織に対する照射との増感効果が高いことが知られている。今回の研究では、各種培養腫瘍細胞の照射とGEMによる増感効果の差異を明らかにするとともに、GEMの放射線増感のメカニズムと照射併用時の細胞周期関連因子などのシグナル伝達の変化ならびに照射併用後の経時的なアポトーシスの多寡や細胞周期の変化について明らかにすることを目的としている。 今回の研究では、培養腫瘍細胞株としてヒト食道癌培養細胞株(TE-1,TE-5)、ヒト肺小細胞癌培養細胞株(LU65)ならびにヒト扁平上皮癌細胞株(A431)を用いることとした。今回の研究で用いた培養腫瘍細胞株の一つであるA431の結果では、クロノゲニックアッセイを用いた放射線感受性の評価を行ったところ、1Gy照射時の細胞生残率は70%程度であった。また、照射後の経時的な細胞数計測にて腫瘍増殖に関する検討を行ったところ、4Gy以下の照射では、照射24時間後には細胞の再増殖を認めたが、6Gy以上の照射では、照射24時間後でも再増殖は認められなかった。現在は、上記培養腫瘍細胞株に対する照射単独の研究を継続するとともに、GEM併用の検討をくわえることで、照射単独処理やGEM単独処理の場合と比較研究を行っている。また、GEMと放射線照射併用が細胞周期やアポトーシスとどのように関連しているかの評価を加える予定としている。
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