低反応レベルレーザー(L.L.L.T.)は本来、皮膚色素性疾患や扁平母斑、アトピー皮膚炎などに用いるが、今回はその中でもメラニンへの吸収率ががよく、かつ深達性に乏しいYAGレーザーを用いることとした。L.L.L.Tを行うにあたっては久留米大学の学内倫理委員会の承認を得て、患者に対しては文書で同意を得た上でを行なった。L.L.L.Tの照射にあたっては事前に形成外科のレーザー担当医師と綿密な打ち合わせを行ったうえ施行した。症例の選別においては、まずはgrade3以上の重篤な放射線皮膚障害を呈した症例を対象とした。放射線性皮膚炎はL.L.L.Tを開始した後より、急速に改善が得られ、掻痒や疼痛などの臨床症状も消失する症例が多く、一次効果は良好と判断し、L.L.L.Tは放射線性皮膚炎に対しても臨床的に有効である可能性が示唆された。また症例選別の次のステップとして、放射線治療開始と同時にL.L.L.Tを予防的に照射することとし、L.L.L.Tが放射線性皮膚炎に対して予防効果があるかを検討した。症例数は少ないが、結果として予防効果が確認された。これらの臨床研究の結果はL.L.L.Tの初期治療経験として、日本医学放射線学会、筑後佐賀頭頸部腫瘍フォーラムに報告した。 現在、治療効果を客観的に評価する目的で、color analizer、皮膚水分計、皮脂計を用いて治療効果を行っている。これらの測定は放射線治療開始と同時に測定を開始し、1週間おきに行い、治療終了4週間後まで測定している。またL.L.L.Tを照射した群としていない群に分けて、比較試験を行っていき、これらの客観的評価の結果は次年度に論文ならびに学会報告予定としている。
|