耐糖能異常・脂質代謝異常・易感染症・血栓症などを一連に呈する病態は、メタボリックシンドロームとして注目されている。これらの症状は、我々が中心静脈栄養施行時に経験する合併症と大変類似している。そこで、ラット中心静脈栄養モデルを作成し、高カロリー輸液に合併する糖・脂質代謝異常のメカニズムを、総合的に検討することとした。 平成17年には、体重200g前後のWister系雄性ラットにカテーテルを挿入し、3群のモデルを作成した。 Control群:標準マウス飼料自由摂取、および中心静脈ルートより生理食塩水を投与した群。 TPN群:中心静脈ルートより標準高カロリー輸液を投与した群。 TPN+L群:中心静脈ルートより標準高カロリー輸液および脂肪乳剤を投与した群。 7日間の中心静脈栄養の後、メタボリックシンドロームにてその変化が注目されている生理活性物質(アディポサイトカイン)の発現を測定した。特に、アディポネクチンの発現と定量を行った。結果、TPN施行群にControl群と比較し変化が示唆された。 これらの結果より、インスリン抵抗性状態で誘導されるさまざまな転写因子の変化がTPNモデルにおいて更に誘導されていないかを、他の遺伝子のmRNAの発現で検索中である。 現在、インスリン抵抗性の治療薬であるチアゾリジン誘導体を投与し、脂質・糖質代謝異常の改善効果を観察中である。 PPARsおよびその周辺遺伝子発現の異常が、中心静脈栄養に合併する糖・脂質代謝異常をどのように増悪・制御しているかを明らかにすることで、かかる代謝異常発現のメカニズムを解明でき、合併症の予防につながる可能性が考えられた。
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