耐糖能異常・脂質代謝異常・易感染症・血栓症などを一連に呈する病態は、メタボリックシンドロームとして注目されている。これらの症状は、我々が中心静脈栄養施行時に経験する合併症と大変類似している。そこで、ラット中心静脈栄養モデルを作成し、高カロリー輸液に合併する糖・脂質代謝異常のメカニズムを検討した。平成18年には、体重200g前後のWister系雄性ラットを以下の3群に分類し、7日間の中心静脈栄養を行なった。Control群:標準マウス飼料自由摂取、および中心静脈ルートより生理食塩水を投与した群。TPN群:中心静脈ルートより標準高カロリー輸液を投与した群。TPN+L群:中心静脈ルートより標準高カロリー輸液および脂肪乳剤を投与した群。 結果、TPN施行群とControl群を比較し、メタボリックシンドロームにて注目されている生理活性物質(アディポサイトカイン)の発現に変化を認めた。これらの結果より、TPNにより発現した糖・脂質代謝異常は、肥満などで観察されるインスリン抵抗性により誘導される一部のアディポサイトカインやPPARsの発現と関連して全身に影響を与えているものと思われた。さらに、このモデルにチアゾリジン誘導体を投与すると、変化の見られたアディポサイトカインの発現は改善した。 PPARsおよびその周辺遺伝子発現の異常が、中心静脈栄養に合併する糖・脂質代謝異常をどのように増悪・制御しているかを明らかにすることで、TPN関連合併症発現のメカニズムを解明でき、合併症の予防につながる可能性が考えられた。
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