研究概要 |
肝細胞癌では、外科的な根治的切除後や局所治療後も、5年以内に約80%で再発が見られる。これは微少肝内転移(IM)や異時性多中心性発癌(MC)が原因と考えられるが、IMとMCでは治療方針が異なるために、この両者を見分けることは癌のオーダーメイドな治療を行う上で臨床上重要であると考えられる。本研究では、染色体におけるゲノムコピー数を測定する手法を開発し、その手法を用いてIMとMCの染色体異常を同定し、その違いを解明することを目的とする。 まず、今年度はPCRベースでの染色体ゲノムコピー数の変化を同定する手法(Competitive Genome PCR法;CGP法と命名)の開発を行った。CGP法はPCRで行うため、簡便で臨床的にも使いやすいと考えられる。現在までに本手法を開発し確立したが、本手法の感度を検定するため、以下の解析を行った。まず、X染色体のコピー数の異なるcell line(46XY(1X)、46XX(2X)、47XXX(3X)、48XXXX(4X)、49XXXXX(5X)の5種類の核型をもつcell line)からのgenomic DNAを用いて、46XXをreferenceとし、本手法によりX染色体のコピー数の比較を行ったところ、微小なゲノムコピー数変化も検出でき、高感度で解析が行えることが判明した。また12種類のneuroblastoma cell lineからのgenomic DNAを用いた、MYCN遺伝子近傍の増幅領域の同定をするなど、実用的な解析が可能であることも明らかとした。この手法は、昨年11月に国内で特許申請を行ったほか、現在、論文の投稿も完了している。現在は肝細胞癌を用いて、IM,MCの遺伝子診断を行うべく、プライマーを設計し、順次解析を行っているところである。
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