AKT/PI3Kシグナル伝達系の活性化はアポトーシスに抑制的に働き、その経路を抑制するPTENは様々な癌で異常が認められる。我々は、癌におけるこの経路の活性化と薬剤感受性について解析した。 【対象と方法】119症例の胃癌および131症例の乳癌を対象とし、PTENに関しては、マイクロサテライトマーカーを用いてLOHを解析、さらにMSPによるメチル化の検討、免疫染色による発現解析を行なった。AKTのリン酸化はリン酸化特異抗体を用いた免疫染色で評価し、新鮮臨床検体を用いてMTT assayを行ない、抗癌剤感受性も検討した。 【結果】胃癌、乳癌ともにPTENがLOHの症例でAKTがリン酸化されている症例が有意に多かったが(p<0.02)、PTENのメチル化や免疫染色はAKTのリン酸化と有意な関係は認めなかった。また、胃癌において、抗癌剤の感受性をMTTアッセイで検討すると、pAKT陽性の癌では、抗癌剤、特に5-FUに有意に耐性であった(P<0.02)。乳癌では、HER2陽性例でAKTのリン酸化されている症例が多く(p<0.001)、HER2陽性でPTENもLOHを示す症例ではAKTのリン酸化されている症例が多かった。さらにHER2陽性でPTENもLOHを示す症例ではホルモンレセプターの発現が認められず、AKT/PI3Kシグナル伝達系の異常とProgesterone receptor(PR)の発現に何らかの関係があることが示唆された。 【考察】PTENのLOH statusが最もAKTのリン酸化に関わること、およびAKT/PI3K系シグナル伝達系の活性化が癌の薬剤感受性に影響を及ぼすことが明らかとなった。
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