単心室のフォンタン手術及び遠隔成績は向上してきているが、フォンタン術後の生活の質向上には限界がある。基礎研究により広背筋による低圧系右室ポンプ機能の再現の可能性が示唆されたが、縦隔内はスペースが制限されており右室ポンプの新設は容易ではなく、特に小児においてこの傾向が強かった。配置場所によっては肺を圧迫し後負荷の増大を来たすという矛盾もあった。本研究の目的は、生理的かつ効率的な遊離型自己蠕動広背筋ポンプにより、単心室における右室ポンプ機能を再現・向上されることにある。10kgビーグル犬を用いて、急性期モデルにおける遊離自己広背筋ポンプの作成を施行し、ソノメトリクス社のデジタル心機能評価システムを用いて解析を詳細に行った。冠動脈末梢の結紮による急性の右心室梗塞モデルを作製し、それに対する遊離自己広背筋ポンプを縦隔内で効率的に血流を送るための配置と非人工材料のポンプのデザインを検討した。心嚢内に遊離骨格筋を誘導し、梗塞層を覆うように骨格筋を配置し、その骨格筋を装着し、ポンプ補助が可能なモデルを作製することができた。さらに心同期により骨格筋を刺激収縮する装置を考案し、心同期下骨格筋収縮によるネイティブ心の心機能向上効果をソノメトリーシステムにより計測した。冠動脈結紮前後で、梗塞領域において8.8±0.6(mm)→2.6±0.9の減少を認め、広背筋ポンプにより、12.1±3.3まで著しく上昇を見た。これらの壁運動からの心機能(FS値)評価としては、梗塞域において広背筋ポンプの心同期補助において約20%の機能上昇を認めた。特に骨格筋刺激において適切なバースト刺激を与えた場合、その心機能はさらに約33%アップした。心同期遊離広背筋ポンプによる心補助の可能性が示唆された結果であった。
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