研究概要 |
本年度は,移植対象となるブタから静脈血管由来血管内皮細胞を単離・培養して,予め脱細胞化したブタ大動脈弁に播種して,静脈を採取したAutologousなブタの下行大動脈に移植する実験を開始した.具体的には,まずブタから乳下静脈を採取し血管内皮細胞をコラゲナーゼで単離・培養した.次に,1×10^7個の細胞を別途処理した脱細胞化ブタ大動脈に播種して,二軸回転バイオリアクターで弁表面に均等に播種した後に48時間CO2インキュベータで静置した.その後,昨年度開発した生理的拍動流・拍動圧力を創出可能なバイオリアクターシステムを用いて,さらに48時間,平均流量2L/min及び圧力80/40mmHgで拍動循環培養を行った.その細胞播種したハイブリッド大動脈弁をバイオリアクターから取り外し,Autologousなブタの下行大動脈へ移植する実験を開始した. 一方,脱細胞化したブタ大動脈弁について引張試験を行い,詳細に力学的強度を検討した.生体組織は力学特性に異方性があることを鑑み,大動脈弁の弁葉及び血管の双方について,軸方向及び周方向のそれぞれについて組織を切り出して引張試験を行った.応力-ひずみ線図からコラーゲン成分及びエラスチン成分の弾性率,及び組織の破断強度を得て比較した結果,軸方向及び周方向の弁葉及び血管すべてについて脱細胞前と脱細胞後では同等であることが明らかとなった.したがって,本組織脱細胞化方法は細胞に特異的に作用しており,細胞外マトリックスには影響を及ぼさないということが明確となった. また,ブタ組織を人間に移植する際に超急性拒絶反応を引き起こす原因であるα1,3ガラクトース抗原を,申請者独自のマイクロ波と拍動循環を駆使した組織脱細胞化方法で除去できることを免疫組織染色により明らかにした.
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