研究概要 |
神経膠腫における薬剤耐性機構にAkt-mTOR経路が関与しているのかを、神経膠腫培養細胞をもちいて検討した。最初に種々の細胞株のAkt-mTOR経路の活性化状態について、リン酸化抗体を用いたwestern blotにて検討したところ、U251,A172細胞において未処理の状態でリン酸化Aktが検出された。これらの細胞株にPI3K阻害剤(LY294002:LY)、mTOR阻害剤(rapamycin:Rap)処理したところ、リン酸化Akt、リン酸化mTOR、p70S6Kの抑制が確かめられた。LYでは、濃度依存性に細胞死が誘導されたが、Rapでは細胞死は誘導されなかった。LY,Rapとも細胞に細胞死を誘導しない濃度で前処置を行い、その1時間後CDDP,vincristine,etoposide等のanticancer drugにて細胞死を誘導した。処理後3日目の細胞死の割合をトリパンブルーdye exclusion assayにて検討したところ、LYで前処置を行った細胞では細胞死の増強効果が認められたものの、Rap前処理では細胞死増強効果はわずかであった。これらの結果から、Akt-PI3K経路は薬剤耐性に関与しているものの、その下流のmTOR経路が薬剤耐性に主要な役割を果たしていないことを示唆している可能性と、または最近になって報告されたRapamycinにて抑制を受けない経路(mTOR-rictor)が関与している可能性が考えられた。
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