DNA二重鎖切断の重要な修復機構である「非相同末端結合修復」に関わるKu70及びKu80の悪性グリオー射線抵抗性への関与を解明し、Ku70及びKu80に対するsiRNAを用いてDNA修復機構を制御することが、悪性グリオーマの放射線感受性をさらに高めた新たな治療法と成り得るか否かを検討した。 これまでに、グリオーマ手術標本を用いて、DNA修復関連遺伝子が悪性グリオーマにおいて過剰に発現し、放射線治療抵抗性の主因であることを報告してきた。そこでKu70及びKu80に対するsiRNAを作成し、グリオーマ細胞株におけるKu70及びKu80 mRNA/蛋白発現が抑制されることを確認し、今後のヒトへの臨床応用を目指して、HVJ-Eベクターを用いた導入実験を行った。まず、導入効率及び細胞毒性の検討を行い、次にグリオーマ細胞株においてHVJ-EベクターによりKu70及びKu80に対するsiRNAを導入し、colony forming assayを用いて放射線作用増強効果を確認した。In vivo実験ではヒトグリオーマ皮下腫瘍モデルを作成し、HVJE-vectorにより高率に導入されたKu70及びKu80に対するsiRNAより放射線治療効果が増強されることを確認した。 HVJ-Eベクターを用いてKu70及びKu80 siRNAを導入することで、安全にDNA修復機構を制御でき、ヒト悪性グリオーマにおける放射線感受性を高めた新たな治療法と成り得る可能性を証明した。
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