神経膠芽種20例の標本を用いて免疫組織学染色を行った。症例は20例中、7例にインターフェロンを術前投与しており、これらを合わせてミクログリア、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)に関して検討を行った。この結果、ミクログリアは全17例、85%に陽性であり、ミクログリアの出現率は術前のインターフェロンの投与の有無や放射線化学療法の有無には関与していなかった。INOSはインターフェロンを腫瘍内投与した2例のみに高度に陽性であった。このため、結果として腫瘍内にはミクログリアが存在しており、これらはインターフェロンを腫瘍内投与した場合のみ、刺激を受け、活性化し、iNOSを発言することが判明した。INOSは過去の報告より高濃度の一酸化窒素(NO)を誘導し、腫瘍増殖抑制効果をもつことが知られている。このため、高濃度のNOが神経膠腫にどのような作用をもつかどうかを培養細胞を用いて分子生物学的に検討した。培養神経膠腫細胞にNO供与体を負荷し、DNAマイクロアレイを用いて解析した。NO濃度は高濃度と低濃度の2種類用意し、それぞれコントロールと検討した。この結果、高濃度NOは腫瘍増殖抑制効果をもつことが判明した。低濃度では明らかな効能は認められなかった。また、個々の遺伝子群を検討してみるとEGFRの有意なdown-regulationが認められた。更に解析を行うと、更に下流にシグナル群で顕著に低下がみたれた。今後はこれらの個々の遺伝子群に関して、PCRを用いて定量化を行い、更に検討を行う予定である。現在までの結果として、神経膠腫に対するインターフェロンの効果は、腫瘍内のミクログリアを活性化させた結果、活性化ミクログリアがiNOSを大量に発現し、これらが高濃度のNOを誘導した結果、抗腫瘍効果がえられる可能性が示唆された。
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