神経膠芽腫の摘出標本を用いた免疫染色を行った。術前にインターフェロンを静脈内投与、局所投与したものと投与なしで比較すると、局所投与した群にのみ誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現が認められた。このiNOSの発現細胞は二重染色の結果、脳内マクロファージであるミクログリアと判明、インターフェロンでの直接刺激によるものと考えられた。また高濃度のiNOSは大量の一酸化窒素(NO)を誘導することが判明している。次に神経膠芽腫の培養細胞を用いてNO負荷による抗腫瘍効果をDNAマイクロアレイを用いて解析した。NO負荷を与えた群と負荷なしの群で比較したところ、NO負荷では明らかな腫瘍増殖抑制関連の遺伝子が発現増加しており、また腫瘍増殖効果をもつ関連遺伝しの発現低下がみられた。これらの結果より、従来の報告ではインターフェロンの抗腫瘍効果はp53を介したものとされていたが、神経膠芽腫の場合、大量のNO誘導による新たな経路が生じている可能性がある。特に大量のNOによりEGFR-JAK/STAT経路を介している可能性が判明した。さらに培養細胞を用いてインターフェロンによる大量NO誘導療法を増強させるため、リポポリサッカライドを追加し、検討している。またEGFRの分子標的薬剤も追加し、抗腫瘍効果の増強を検討している。神経膠芽腫の新規化学療法としてアルキル化剤のTemozolomideが使用されているが、本薬剤はインターフェロンの併用によりMGMTの不活化が促進された結果、抗腫瘍効果の増強が予想される。このため、現在、全国規模で治験が行われている。これより、本研究結果も合わせてインターフェロンの静脈内投与+局所投与により、抗腫瘍効果が増強され、神経膠芽腫治療が進歩する可能性がある。
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