本年度は頚椎後縦靭帯骨化症(OPLL)のうち連続型といわれる2椎体以上に連続して骨化伸展が認められた症例の血液サンプル30例およびコントロールとして65歳以上の靭帯骨化を認めない症例の血液サンプルを50例集めDNAの分離、抽出を行った。またこれらの症例および以前から収集していた症例について画像および血液等について臨床データを収集した。さらに遺伝子解析としてはHuman retinoic X receptor beta遺伝子の解析を行い、以前に報告されているrs2072915のSNP(A→T)について、今回新たなDNAサンプルを用いてvalidation studyを行った。その結果Tを持つOPLL症例のアレル頻度は0.169、コントロールのアレル頻度は0.208であり、カイ二乗値は3.0256、P値0.082で、case-control studyにおける有意差は認めることができなかった。 またOPLLおよびコントロール由来黄色靭帯培養細胞に対しアスコルビン酸、デキサメタゾン、ベータグリセロフォスフェートを加えた骨化誘導培地を添加し、骨化関連因子に関するマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果TSG-6(tumor necrosis factor-stimulated gene 6)という遺伝子の発現の減少を両者で認めた。mRNAレベルでのRT-PCRによる定量解析ではTSG-6の発現がOPLLで75%、コントロールで50%減少しており、OPLL由来細胞での発現減少が強いことを確認した。また骨化誘導培地における両者の発現減少は、この因子が骨芽細胞分化の制御に関与していることが示唆された。
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