本年度は60歳未満の頚椎後縦靱帯骨化症(OPLL)のうち、2椎体以上に連続して骨化が認められた連続型症例の血液サンプル30例について、XpおよびCTを用いた画像と血液生化学データとの臨床的な関連について検討した。その結果、全身性の骨関節炎症性マーカーと骨化部位および伸展状態との間に関連を認めなかった。また従来報告されている糖尿病との関連についても関連を見いだせなかった。また60歳以上のOPLL症例との画像比較では、60歳未満群で骨化部位は第3頚椎を含む上中位頚椎部に統計学的に有意に多かった。疾患感受性遺伝子であるCollagen11A2および6A1遺伝子多型と骨化形態との間に関連は見いだせなかったが、経時的な骨化伸展との関連について検討が必要である。 また、ヒト間葉系幹細胞におけるAdenovirusによるTSG-6遺伝子の強発現により、骨特異的遺伝子とタンパクの抑制、alkaline phosphatase活性の抑制が見られた。さらにBMPシグナルパスウェイにおけるSmad1のリン酸化抑制とSmad complexの核内移行の抑制を認めた。C2C12細胞においても、骨特異的転写因子の抑制を認めた。またTSG-6とBMP-2の結合親和性は、ヒアルロン酸添加によって消失し、TSG-6によるBMP-2誘導骨芽細胞分化の抑制も消失した。すなわちヒアルロン酸結合ドメインが関与したTSG-6タンパクとBMPとの直接相互作用により、TSG-6がBMPの受容体結合を抑制して、次のBMPシグナルを抑制し、さらには骨芽細胞分化を抑制すると考えられた。またBMP-2とTSG-6の結合親和性は、ピアルロン酸によって制御されると考えられた。OPLLの異所性骨化が骨芽細胞促進と抑制のインバランスによって生じると考えた場合、TSG-6はOPLLの異所性骨化を抑制する標的分子になる可能性がある。
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