人工膝関節置換術において、生理的状態である膝蓋骨整復位での新たなギャップテクニックの開発と、同手技で行なった人工膝関節置換術中および術後の膝関節動態を解析することで、膝の静的スタビライザーである靭帯の適切なバランスや、動的スタビライザーの一つである膝蓋腱の至適緊張度を明らかにすることを目的として研究を行った。今回は特に、膝伸展機構の緊張度が人工膝関節置換術手術時の屈曲-伸展関節ギャップに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 後十字靭帯切除型の人工膝関節置換術を行った20膝を対象とし、膝蓋骨を整復した状態で屈曲角度0から135度における関節ギャップと、その際に生じた膝蓋腱の縦ひずみを単軸型汎用箔歪みゲージにて計測した。膝蓋腱の平均ひずみ値は、膝関節屈曲角度の増大とともに徐々に増加した。関節ギャップの平均値は、135度では90度に比べ有意に減少していた。また90度から135度への膝蓋腱のひずみ値の増加量が大きいほど、関節ギャップの減少量が大きい傾向にあった。膝蓋腱のひずみの大きさは膝蓋腱に生じる応力に比例すると考えられるため、深屈曲位での膝蓋腱のひずみ増加量が大きいほど関節ギャップが減少していたという今回の結果は、膝伸展機構の緊張度が膝蓋骨整復位での関節ギャップ規定因子のひとつであることを示唆するものである。また、研究の成果は2006年のアメリカ整形外科基礎学会にて発表した。
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