破骨細胞は骨吸収の主細胞であり、その分化はRANKLにより開始され、前駆細胞→TRAP陽性単核細胞→TRAP陽性多核破骨細胞と進化する。申請者はこれまでの研究により転写因子NFAT2がTRAP陽性単核細胞からTRAP陽性多核破骨細胞への分化ステップに不可欠であることを報告しているが、この時期は細胞融合過程や骨吸収機能の獲得という破骨細胞の機能発現に重要な分化段階であり、分泌タンパク質や膜タンパク質の大幅な転換が起こることが予想される。そこで本研究では破骨細胞で発現する分泌タンパク質および膜タンパク質をシグナルシーケンストラップ法により網羅的に探索し、NFAT2の下流因子に着目して機能解析することにより、NFAT2により制御される破骨細胞分化機構を分子レベルで理解することを目標とする。 本年度はin vitroで分化させた破骨細胞からmRNAを抽出し、これを鋳型としてcDNA発現ライブラリーを作成した。作成したライブラリーを用いてシグナル配列を有するcDNA断片のスクリーニングを行った結果、得られたcDNA断片のほぼすべてがシグナル配列を有していた。本スクリーニングでは合計42遺伝子を見出されたが、これらには成熟破骨細胞における発現がすでに報告されているメタロプテアーゼMMP9やM-CSFレセプターなどが含まれており、本スクリーニングが正しく遂行されていることが強く示唆された。今後は得られた各種遺伝子の発現プロフィールの検討を行い、さらにNFAT2制御下に位置する遺伝子に着目し、これらの機能解析を行う予定である。またNFAT2の下流遺伝子としてケモカインレセプターCCR1を見出し、CCR1がTRAP陽性単核破骨細胞におけるMIP-1αに対する走化活性に必須であることを見出した。
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