本研究は破骨細胞で発現する分泌タンパク質および膜タンパク質を網羅的に探索し、特にNFAT2の下流因子に着目して機能解析することにより、NFAT2により制御される破骨細胞分化機構を分子レベルで理解することを目標とする。本年度は以下の3点の成果を得た。1.破骨細胞cDNAライブラリーから再度スクリーニングを行った。昨年度のスクリーニングとあわせて、独立クローン数1.14x10^6のcDNAライブラリーに対し1.49x10^6クローンをスクリーニングしたことから、cDNAライブラリーのほぼすべてのスクリーニングが完了したと考えた。この結果、合計50種の膜タンパク質、分泌タンパク質を見出した。2. 1.の結果から見出された各タンパク質の破骨細胞分化過程における発現プロフィールをRT-PCR法により決定した。3. 1.の解析から見出された膜タンパク質HB-EGF(Heparin-Binding EGF-like Growth Factor)は、申請者が以前に行ったNFAT2標的候補遺伝子の探索の際に見出され2006年に論文報告している分子である。そこで破骨細胞分化過程におけるHB-EGFの機能解析を行った。その結果、(1)破骨前駆細胞に強制発現すると破骨細胞分化過程が抑制されること、(2)分化抑制活性にはリガンド領域ではなく、ADAMプロテアーゼによる切断後に生じるC末端領域にあること、を見出した。HB-EGFの細胞外領域(N末端領域)が増殖因子として働くことが明らかにされているのに対し、C末端領域の機能は未知である。本研究の成果からHB-EGFのC末端領域を介した新規作用機構の存在が示唆された。
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