研究概要 |
small interfering RNA(siRNA)の関節内における標的遺伝子抑制効果を検討した。EGFPトランスジェニックラットの膝関節にGFP-specific siRNAおよび導入試薬siPORT Amineを投与後、経皮的にelectroporation(150V,100ms,前後左右3回ずつ刺激)を行った。投与24時間後に関節滑膜の凍結切片を作成し、蛍光顕微鏡下に観察した。関節滑膜の蛍光は著明に減弱していた。 次に関節リウマチの病態形成にかかわっているTNF-αに対するsiRNAを用いて、動物モデルに対する治療効果を検討した。DAラットにコラーゲンおよびアジュバントの皮下注射を行い、関節リウマチモデルであるcollagen induced arthritis(CIA)を作成した。免疫感作後、7、10、13、16日目にTNF-α-specific siRNAとsiPORT Amineをelectroporationによって左膝関節に投与した。TNF-α-specific siRNAを投与した群では、投与側の足部の腫脹が著明に抑制された。また、組織学的にも関節の破壊が抑制された。これらの関節炎抑制効果はmismatched-siRNA投与群では認められなかった。 本研究の結果では、electroporationを用いてsiRNAを関節内に投与することにより、関節滑膜において標的遺伝子を特異的に抑制できることを明らかにした。また、本法を用いて、疾患原因遺伝子を抑制することにより、関節リウマチモデルの進行を抑制することに成功した。 今後は関節リウマチの病態形成にかかわっている他のサイトカインであるIL-1β、IL-6に対するsiRNAを用いて、さらに高い治療効果を得られる方法を検討する予定である。
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