昨年までの本研究で、in vivo electroporation法を用いてsmall interfering RNA(siRNA)をラット膝関節内に投与することにより、関節滑膜において標的遺伝子を特異的に抑制できることを明らかにした。また、本法を用いて、関節リウマチの病態形成にかかわっているtumor necrosis factor-α(TNF-α)に対するsiRNAを投与することにより、関節リウマチモデルであるcollagen induced arthritis(CIA)の進行を抑制することに成功した。 本年度は関節リウマチの病態形成にかかわる他のサイトカインに対するsiRNAを作成し、その治療効果を検討した。ラットtumor necrosis factorα(TNF-α)、interleukin-1β(IL-1β)およびinterleukin-6(IL-6)に特異的なsiRNAを作成した。コラーゲンの皮下注射によりCIAを誘導した。免疫感作後7、10、13および16日目に左膝関節にelectroporation法を用いてそれぞれのsiRNAを導入した。左足部腫張の肉眼的評価および体積、足関節のX線学的および組織学的評価を行った。無処置群を対照とした。 全てのサイトカインに対するsiRNA導入群で対照群に対して関節腫脹の発症は遅れた。siTNF-α治療群が最も関節炎抑制効果が強かった。x線スコアはsiTNF-αおよびsiIL-1βによる治療群で有意に低値であった。組織学的スコアはsiTNF-αおよびsiIL-1β治療群で有意に低値であった。 本研究では、siRNAを用いて関節疾患の病態形成にかかわる因子の産生を関節内で抑制することにより、関節疾患の治療効果が得られることを明らかにした。
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