骨折治癒過程におけるCOX2の役割を明らかにするために、10週齢(若週齢)および40週齢(高週齢)COX2ノックアウト(KO)マウスとワイルドタイプ(WT)マウスの両側大腿骨骨折モデルを計4群に分けて作製した。片側に低出力超音波パルス(Low intensity pulsed ultrasound ; LIPUS)を照射したものを照射群、反対側を非照射群とした。それぞれの群を骨折後時系列で犠牲死させ、LIPUSが骨折治癒過程に与える効果を軟X線撮影、μCT撮影、組織化学染色および組織免疫染色を用いて検討した。 若週齢WTマウスでは、骨折後3日で血腫形成、5日で炎症性細胞の浸潤、膜性骨化および軟骨形成、7、10日で軟骨架橋と内軟骨性骨化、14日で硬性仮骨架橋形成による骨癒合を認め、21日で骨癒合とリモデリングを認めた。若週齢COX2 KOマウスの骨折治癒はWTマウスと同等に認め、COX2の有無による著変は認めなかった。 高週齢骨折モデルの骨折治癒過程は、若週齢に比して軟骨形成と内軟骨性骨化にかかる期間が延長を示した。このモデルにLIPUSを骨折後1日から照射しても、骨折後10日の膜性骨化と軟骨形成に変化は認めなかった。しかし、硬性仮骨架橋を認めるまでの内軟骨性骨化にかかる期間を著しく短縮した。これらの結果から、LIPUSは高週齢骨折モデルにおける骨折治癒遅延に対しても骨折治癒促進効果を示したと考えられた。 高週齢COX2 KOマウスでは、骨折後10日の膜性骨化と軟骨形成は、高週齢WTマウスと同等に認められた。骨折後21日では内軟骨性骨化を認める一方で、骨折部に隣接する仮骨中心部の線維性組織が広範囲にわたり残存していた。このモデルに対してLIPUSを骨折後1日から照射しても、骨折治癒過程に大きな変化は認められなかった。これらの結果から、LIPUSの骨折治癒促進効果を示す機序にはCOX2が必須であると考えられた。
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