(1)klotho遺伝子ノックアウトマウス野生型マウスとでNa-K ATPase活性に差異があるのか。 klotho遺伝子発現細胞は腎臓皮質に限局し、一方、Na-K ATPase遺伝子発現細胞は、腎臓髄質および皮質でも見られるが、in situ hybridization法により、腎臓皮質においてのみ、両遺伝子発現細胞の一致が見られることを考えれば、腎皮質におけるNa-K ATPase機能こそがklotho遺伝子の影響下にあると考えられたので、両マウス腎臓から皮質のみを単離し、vanadate-facilitated[^3H]ouabain binding site content analysisにより、Na-K ATPaseの密度(含有量)が異なるかを検討したところ、ノックアウトマウスの腎臓で優位に上昇しており、さらに、^<86>Rb摂取率によるNa-K ATPase活性についても同様で、ノックアウトマウスでは、野生型マウスと比較して、Na-K ATPase活性も優位の上昇を認めた。 ただし、マウス腎臓での髄質と皮質の分離にかなりの時間を要し、これからはpreliminary dataである。論文投稿には再現性が必要であることは強調しておく。 (2)klotho遺伝子ノックアウトマウスと野生型マウスとでNa-K ATPaseを介するステロイドシグナルカスケードに違いがみられるか。 前年度報告したように、野生型マウス腎臓を用いたnorthern-blot法により、ouabain投与により、klotho遺伝子の有意の発現上昇が認められた。Na-K ATPaseがステロイドのsignal transducerとして機能する際、内因性のcardiac glycosideであるouabainからの入力シグナルが最たるものであり、膜型KLOTHO蛋白はNa-K ATPaseと結合することでこのシグナルを制御していると考えられる。従って、klotho遺伝子ノックアウトマウスと野生型マウスとでは、ouabainに対する反応が異なり、これが表現型に寄与していることが予想され、ouabain投与後の両マウスから腎臓を摘出、さらに皮質を単離、これらよりmRNAを調整し、subtraction PCR hybridization法により、両者間で発現差異の著しい遺伝子群を見出す予定であったが、前述したように腎髄質と皮質の分離に時間を要し、結果は得られていない。
|