研究初年度は、予備実験を施行した。Sprague-Dawly系雄ラットを用いてペントバルビタール麻酔下に下部腰椎間からくも膜下腔にカテーテルを留置した。くも膜下腔に局所麻酔薬を投与し、投与前、投与後の鎮痛効果と循環動態の変動を測定した。ラットに生理食塩水を投与しても、Tail Flick test値の%MPEの変化はなかった。局所麻酔薬リドカインをくも膜下投与すると、Tail Flick test値の%MPEは用量依存性に上昇した。循環動態の変動を調べるために吸入麻酔薬ハロタンを用いて全身麻酔下に局所麻酔薬リドカインをくも膜下投与した。全身麻酔導入後から徐々に血圧の低下し、血圧が安定したところでリドカインをくも膜下投与した。低濃度から高濃度の鎮痛効果が得られた投与量では循環に変動はなかった。次に、ペントバルビタール麻酔下にリドカインをくも膜下投与した。この場合も、ペントバルビタール麻酔後から徐々に血圧が低下し、血圧が安定したところでリドカインをくも膜下投与したが、全身麻酔下と同様にリドカインで鎮痛効果が確認された投与量では循環に変動はなかった。覚醒下のラットのくも膜下にリドカインを投与したところ、この状態においても鎮痛効果の得られる投与量では循環の変動はなかったが、鎮痛効果が得られる何倍もの投与量では血圧の低下がみられた。 次年度は、引き続き非NMDAグルタミン酸受容体拮抗薬の単独投与と局所麻酔薬との混合薬をくも膜下投与したときの鎮痛効果、並びにその際の循環変動を調べる予定である。
|