平成18年度は平成17年度の肝移植術中の酸塩基平衡に関する知見をさらに詳細に解析し、67名の生体肝移植患者において、無肝期における代謝性アシドーシスには乳酸とUnmeasured anionの上昇が関与し、再灌流後の代謝性アシドーシスの回復には乳酸の低下よりUnmeasured anionの低下がより多く関与していることを見いだした。本研究結果は肝移植術中の代謝性アシドーシスに対する治療に大きく貢献するものと考える。 また平成18年度には、オーストラリアの施設との国際情報交換により、重症患者における輸液療法が酸塩基平衡、Unmeasured anionに与える影響に関する研究を行った。本研究では生理食塩水とアルブミン液の比較検討試験のデータの解析を行い、輸液の種類よりも輸液量が代謝性アシドーシスに関与し、輸液の種類はUnmeasured anionに影響しないことを見いだした。従来から言われている生理食塩水投与による高塩素性代謝性アシドーシスは、今回のアルブミン液との比較では認められず、大量の生理食塩水投与を行わなければ代謝性アシドーシスにはならず、実際の臨床現場では高塩素性代謝性アシドーシスの頻度は高くない可能性を示した。 これらの新しい知見により、重症患者におけるUnmeasured anionの特徴、重要性が再確認され、平成19年度には、これらの新しい知見の総括を行いつつ、さらなるUnmeasured anionの役割を研究していく。
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