平成19年度は過去2年間の研究成果を受けて、そのまとめを行った。小児心臓手術後急性腎不全患者の検討では、Unmeasured anionが代謝性アシドーシスの主因ではなく、低ナトリウム血症が代謝性アシドーシスの主因であることを見いだした。しかし、これらの因子は患者予後との関係は少なく、逆にアルブミン値が患者予後と関係していることも見いだした。肝移植患者における検討では、肝移植手術中の代謝性アシドーシスの主因は乳酸値の上昇ではなく、Unmeasured anionの上昇であることを見いだした。しかし、この肝移植術中のUnmeasured anionの上昇と術後肝機能との関係は不明である。現在の所、重症患者ではある病態においてはUnmeasured anionの上昇が代謝性アシドーシスの原因となりうるが、同じ腎不全であっても、年齢、腎不全の原因によって、その重要性は異なることが推測された。また肝不全の病態においては、乳酸値のみならずUnmeasured anionが代謝性アシドーシスの主因となりえる事が解明された。また、国際情報交換により、Unmeasured anionの推定に影響を及ぼす、ナトリウムや塩素イオンの測定にアルブミン植が大きく影響することを見いだした。今後アルブミンの酸塩基平衡に与える影響は重症患者の酸塩基平衡異常の解明のために重要であると思われた。3年間の研究を通して、各種病態におけるUnmeasured anionの代謝性アシドーシスにあたえる影響は異なっており、より詳細な解析が必要であると思われた。臨床でも多く用いられているアルブミンは代謝性アシドーシス、患者予後、Unmeasured anionに大きな影響をあたえ、今後の研究課題として重要であると思われた。
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