中等度までの活性酸素の増加は心筋や脳の虚血耐性をもたらす。イソフルレン(Iso)は神経細胞の虚血耐性を生じ、脊髄保護作用はantioxidantによって阻害されることが報告された。Isoが神経系の活性酸素を増加させることが推測されるが、この点は実証されていない。昨年度までは、ラット大脳皮質グリアーニューロン混合培養を用いて、ニューロンと思われる細胞について、superoxideレベルの増加を解析した。この培養系では、グリアが40%程度を占め、選択した細胞の中にグリアが混在する可能性が取り除けない。今年度は無血清培地を用いた培養法に変更し、ほとんどがニューロンとなる大脳皮質ニューロンの一次培養系を確立し、実験を行った。 胎児ラット大脳皮質から細胞を単離し、neurobasal mediumに添加剤としてB-27を加えた無血清培地を用いて培養7日後に実験を行った。Dihydroethidiumを室温で45分間培養細胞に添加した。この色素はsuperoxide anionと反応してethidiumを生成し、これがDNAと結合して安定した蛍光を発する。ニューロンと考えられる細胞の蛍光輝度の変化を2分毎に測定した。Isoは50%有効濃度の1.65倍および2.3倍の濃度において、蛍光輝度を対照群より有意に増加させた。この効果はミトコンドリアATP感受性Kチャネル阻害薬と考えられる5-hydroxy decanoic acid(5-HD)によって阻害された。 以上から、Isoはニューロンのsuperoxide anion生成を増加させると考えられた。5-HDによって阻害されたことから、この効果はATP感受性Kチャネルの活性化によることが考えられる。しかし、5-HDは同チャネル阻害作用のほかにミトコンドリア電子伝達系に対する作用もあり、この系の変化が活性酸素増加に関与した可能性も考えられる。
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