平成17年度の計画では、「逆向性染色法」を用いた特異的な感覚神経の同定と、「パッチクランプ記録法」で侵害受容器のカプサイシン受容体の働きを調べる予定を立てていた。大学内には、電気生理のセットアップを保有しているが、麻酔・危機管理学には独自のセットアップを現有していないため、また使用者も増加してきているため、効率改善を図るためにも、科学研究費補助金でパッチクランプ記録のために必要なセットアップの一部を購入し、効率的に実験を進めることができた。 1)「逆向性染色法」による足底皮膚・筋に分布する神経の同定 麻酔下において、マウス(20-30g)の足底部分に、DMS0で溶解したdicarbocyanine dye DiIを2μl注入する。 DiIが脊髄後根神経節細胞まで逆向性輸送されるまで、2週間待つ。2週間以降に脊髄後根神経節を取り出し、コラゲナーゼ、トリプシン処理後、神経細胞を単離培養し、細胞体に逆向性軸索移動したDiIを、特殊フィルターを用いた顕微鏡下で観察し、足底部分に分布する一次求心神経を同定しようとしている。神経細胞の培養には成功し、電気生理学実験を行なえるところまで来た。しかし、これまでに同様の方法で内臓感覚神経の同定は確立できたが、足底に分布する体性感覚神経の同定に関しては、まだ安定した結果が出ていない状況である。 2)パッチクランプ記録による皮膚侵害受容器における痛覚受容に関わる受容体・イオンチャネル、特にカプサイシン受容体を含め、その性質を明らかにする。 皮膚感覚神経の同定が確立できていないため、予備的実験として、非特異的な感覚神経を用いて、パッチクランプ記録を行なっている。マウス培養後根神経節細胞(感覚神経)を用いた実験では、酸(プロトン)に対する反応から、異なるpHに反応する数種類の酸感受性が認められており、虚血組織、炎症組織でのこれらの感覚神経・イオンチャネルの関与が示唆される。 今後、足底皮膚・筋に分布する神経の同定方法に改善を加え、またラットを用いた実験に変更することも考慮し、早急に神経の同定を確立したい。また、本年度は行動実験を開始する予定である。
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