最近の研究により、水チャネルであるアクアポリン4(AQP4)の過剰発現が脳浮腫に関与している可能性が示唆され、発症機序解明へ大きな進歩となった。また、申請者はAQP4の機能が低下すると細胞機能が維持できないことを最近見出した。そこで、本研究では、siRNAを用いてAQP4発現を低下させた(ノックダウン)培養細胞系を作成し、細胞機能維持に果たすAQP4の役割を詳細に検討した。さらに、上記のノックダウン細胞系を使用して多数の化合物をスクリーニングすることにより、AQP4発現阻害薬あるいはAQP4阻害薬を創出し、新しい脳浮腫治療薬開発を目指した。 平成17年度は、(1)siRNAを用いたAQP4ノックダウン培養細胞系の確立、(2)AQP4ノックダウン培養細胞系における細胞脆弱性の検討、以上2点を計画した。 (1)siRNAを用いたAQP4ノックダウン培養細胞系の確立 siRNAの技術を用いて、培養アストロサイト(以下Ast)におけるAQP4発現を低下(ノックダウン)させる系を確立した。AstにおけるAQP4発現の低下は、ウエスタンブロット法により確認できた。 (2)AQP4ノックダウン培養細胞系における細胞脆弱性の検討 (1)で作成されたAQP4ノックダウン培養系を用いて、AQP4発現の低下が細胞の機能にどのような影響を与えるか検討した。AQP4ノックダウンAstに、アンモニアによる障害を与えたところ、正常なAstと比較してLDH放出量増加、生細胞数低下等を確認した。このことから、AQP4は細胞障害に対して保護的に機能している可能性が示唆された。今後、低酸素など他の障害を与えた場合にも同様な現象が起こることを確認していく予定である。
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