脳浮腫は頭部外傷、脳血管障害、脳腫瘍など様々な病態に随伴して発症し、しばしば致命的となるにもかかわらず、依然として治療法は浸透圧利尿薬の投与や外減圧術などの対症的なものに限られている。また、脳浮腫の発生機序でさえ十分には解明されていなかった。最近、水チャネルであるアクアポリン4(AQP4)が、脳浮腫の発生に関与しているとの報告がある。申請者は、初期実験により、AQP4の機能が低下すると細胞機能が維持できないことを最近見出した。そこで、本研究では、siRNAを用いてAQP4発現を低下させた(ノックダウン)培養細胞系を作成し、細胞機能維持に果たすAQP4の役割を詳細に検討する。また、上記のノックダウン細胞系を使用して多数の化合物をスクリーニングすることにより、AQP4発現阻害薬あるいはAQP4阻害薬を創出し、新しい脳浮腫治療薬開発を目指した。 本年度の研究結果を以下に示す。 (1)AQP4ノックダウン培養i細胞系における細胞脆弱性の検討 17年度確立したisRNAによるAQP4ノックダウン培養系を用いて、AQP4発現の低下が細胞の機能にどのような影響を与えるか検討した。AQP4ノックダウンにより、アストロサイトの明らかな形態変化はなかった。低酸素負荷により、細胞障害の程度を通常のAstと比較して、細胞障害の程度が高度である可能性を得ている。今後、さらに検討を加えていく必要がある。 (2)AQP4発現阻害薬あるいはAQP4阻害薬の探索 (1)で確認できた障害に対する脆弱性を指標にAQP4発現阻害薬あるいはAQP4阻害薬を探索する予定であった。今後、モデルの完成を待ち、検討を行っていく予定である。阻害薬の候補を現在検討している。
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