本年度は下記の臨床研究を実施した。実施に当たっては大阪市立大学大学院医学研究科(以下、本学)倫理委員会および患者、家族からの書面による了承を得た。 難治性てんかんに対して皮質脳波測定および海馬切除を予定された症例を対象とした。セボフルラン単独で麻酔を行い、呼気終末セボフルラン濃度が一定(2.5%)に達して15分以上経過した後に皮質脳波を記録し、棘波の出現を確認した後にデクスメデトミディンの持続投与を開始した。投与はシリンジポンプを用いてtarget controlled infusionを行い、臨床使用濃度の範囲である0.5、1.0、1.5ng/mlで平均血圧、心拍数及び脳波の変化を検討した。各々の濃度での投与開始15分後に採血し、デクスメデトミディンの血中濃度を高速液体クロマトグラフ-質量分析装置(liquid chromatography-mass spectrometory、以下LC-MS)で検討した。 その結果デクスデメトミジン0.5ng/mlでは平均血圧、心拍数とも投与前とは有意差は無く、1.5ng/mlでは平均血圧は有意に上昇し、心拍数は有意に低下することが判明した。脳波に対しては、セボフルランの影響で既に徐波が主体であるため更なる周波数の低下などは認められなかった。また、単位時間当たりの棘波の出現頻度は、今回用いたデクスデメトミジンの血中濃度範囲では有意な変化は認められなかった。以上の結果から、難治性てんかん症例にもデクスデメトミジンは鎮静薬として安全に用いることができる可能性があると考えられた。
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