難治性として知られる神経因性痺痛の発症メカニズムは不明であるが、我々は、ラットの神経因性痺痛モデルと健康ラットの膜電位の間にいくつかの相違点を見つけた。その中で、神経因性疼痛モデルの神経細胞内カルシウムは低下していることが分かった。神経因性痙痛に対して鎮痛効果の高いリドカインの作用機序は神経細胞内へカルシウムを流入させることで達成される可能性が高いことを培養細胞の軸索輸送を介して解明した。リドカインの鎮痛作用機序を、より生理的かつ具体的である神経因性痺痛モデルの感覚神経膜電位を介して、詳細に分析しようと試みたが、神経因性痺痛の発症メカニズムは複雑で多種の系が関与しているようであった。本年度、リドカインの鎮痛作用は生理食塩水により拮抗されることを論文報告した。この中で、ナトリウムイオン濃度やクロールイオン濃度がリドカインの鎮痛作用に大きく影響を与えることを明らかにした。また、神経因性痺痛の代表疾患である帯状庖疹後神経痛患者を対象として、末梢皮膚の一部にリドカインを暴露させるだけで即座に鎮痛作用が惹起されることを証明し、論文報告した。さらに、特発性三叉神経痛患者を対象として、興奮性脳神経においても同様に、リドカインの即効性鎮痛作用が発揮されることを確かめ、論文発表した。これらの結果は神経因性疼痛の発症メカニズムを解明する上で重要と考えられる。また、リドカインの作用機序を考える上でも役立つと思われる。
|