研究概要 |
申請者はこれまでに,転写調節因子Id2遺伝子欠損マウスが高頻度に腎盂尿管移行部(UPJ)の通過障害に起因する先天性水腎症を発症することを見出している。その発現様式には雌雄差があり、片側性であることなど、他の水腎症モデルマウスに比べヒト症例に酷似しており、またId2+/-マウスにも水腎症を認めることから、ヒト水腎症症例においてId2遺伝子変異の存在が強く示唆された。 我々はヒトゲノムDNA中からId2の遺伝子配列を解析する実験系を既に確立し、Id2遺伝子領域とプロモーター領域をあわせた全長約8kbの遺伝子配列の解読が可能である。ヒト水腎症症例の遺伝子解析については、家族内発生例を中心に現在検体採取を行っている。これまでに6家系からの検体採取と遺伝子解析を行った。ヒトId2遺伝子は3つのエクソンからなるが、第一エクソンにほぼすべてのタンパク質コード領域が含まれる。まず約4.0kbにわたるId2遺伝子座をPCRで増幅し、これを鋳型としてPCRによるダイレクトシークエンスを行なった。各サンプルにおいて、エクソン、イントロンについて塩基配列を決定し、GenbBankに登録されているヒトId2遺伝子座の塩基配列を決定した24サンプルいずれにおいても変異を認めなかった。ヒトId2遺伝子座において、SNPs(single nucleotide polymorphisms)が第一エクソン、イントロンにあるが、いずれのSNPsも解析したサンプルにおいては検出できなかった。現在までのところ、水腎症の家族内発症例は約20家系の存在を確認しており、検体採取を順次施行中である。
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